名店『武蔵』のすぐ横に店を構えるという挑戦的姿勢の店（？）。こんな立地条件で本当にやっていけるのか、という周
囲の心配をよそに、開店から約２年、着実にファンを増やしつつある。

店主の一押しは味噌ラーメン。いわゆる札幌味噌ラーメンとは一線を画する仕上がりのそのスープは、４種類の味噌と

３０種類以上の素材から完成される。一般には味噌ラーメンといえば濃厚で大味な仕上がりが思い出されるが、ここの
味噌ラーメンは舌にググッとくる力強い味噌の中に、それら数多の素材たちが優しく舌を撫でる繊細さも兼ね備えてい
る。そしてややピリッとする辛みがあるのだが、これは恐らくカレースパイスではないだろうか。カレー好きの現代人の
嗜好に合いそうな、新時代の味噌ラーメンだ。

そして店主自信の新作が「琥珀ラーメン」という名の塩ラーメン。一般的な札幌ラーメンを想像しているとぎょっとするで
あろう、見た目も味もそれとはかけ離れた、これぞ洗練の極みといった仕上がり。名古屋コーチンを中心に、道内産豚
や香味野菜、各種魚介に４種類の天然塩を効かせたその琥珀色に透いたスープは、鶏を中心とした調和のとれた旨
みが舌にじわじわと滲み出す至福の味わい。焦がしねぎが加わった香りも心地よく、最後まで心を掴んで離さない一杯
だ。最近は札幌でも鶏スープの店が増えたが、その中でも実力は群を抜いている感がある。

この店が推薦できる理由は、店内の居心地の良さにもある。ラーメン屋らしからぬシックな内外装、特注の器、清々し
い接客姿勢・・・何度も足を運びたくなるような雰囲気の良さがある。新時代の札幌ラーメン店として、これからも目が離
せない。

（最終実食日　平成１５年５月２３日）

平成１５年６月３０日、店主の体調不良により閉店しました。体調が良くなり次第、再開を心待ちにし
ています。